2014年12月7日日曜日

マスターアップ!

 ついに終わりました!一つ残らず。あとは何もやらなくても工場でCDを作ってくれます。おめでとうございました!

 前回のブログで「録音終わった」と書いたけれど、弾き直してしまいました。
 移動中も、子どもの寝かしつけが終わってからも、録音したものを毎日聴いていたところ、
 「むむむ…ここ聴いてみるとアラが目立つなぁ」
→「でも、これがこの時の精一杯だったんだし、自分で聴くからこそ悪いところに耳が行ってしまうんだよな、そうに違いない」
→「やっぱりダメな気がする」
→「明らかにダメなところが分かってて人に聴いてもらうってのはどうなんだ?」
 …と思えてきてしまった。僕の場合は「聴く人の立場からしたらこうだろう」とかいって、人のせいにしつつ自己満足を追求する。それがよくないと分かっていつつも、やはり録り直してしまった。

 200回弾いたと書いたけれど、そこが気になったのでもう200回くらい弾いた。特に最後の日は本当に必死に時間を作って、部屋にこもって弾いていた。長いフレーズを録音するというのは、最後の方に差し掛かると緊張感も上がってくるものだ。弾いている間の心境を実況中継すると、
「ここまできちんと弾けたんだ、最後までしっかり弾くぞ…よし、ここまでできれば、あとは難しいフレーズは無いぞ。冷静に終えられれば…。ぐあ、最後の音を伸ばしてる最中にノイズが!」「ダメだやりなおし」こんな感じ。それを何百回も続けるのだ。(ま、早い話が、下手だからそうなるんだけどね。)
 根を詰めて弾いていて、あと1トラックのみというところで部屋に娘が入ってきた。どーんとドアを開けた娘と、その後に入ってきた連れ合いに僕は反射的に「うそー!」と言ってしまった……。
 そこまで時間を作ってあげて、しかも夕飯ができたから呼びに来たのに「うそー!」とは何だ!と言って、連れ合いにすげー怒られた。確かに、そりゃそうだ。怒られるに決まっている。どう考えても僕が悪い。

 次の日、ボブにファイルを渡しに行って、その話をした。「いや、もうこの録り直しのせいで、家庭崩壊かと思ったよ…」などと言いつつ、そんだけ苦労して録ったんだからもう一度ミックスやり直しになっても勘弁してくれよ、と。
 ボブは言った。「ああー、それ分かるよ」と。いや、やっぱり彼とは大学一年の頃からの付き合いなので、ひどい言葉をつい言ってしまったけれど録音に集中していた僕の気持ちも分かってもらえるかな、と。

 彼は話を続けた。僕もこんなことがあった…と。
 ボブは実兄に自分の購入したばかりのパソコンを占有されていた。その日もオンラインゲームにのめり込んでいた兄は家族用を含めて家の4回線を自分ひとりで使っていた。ボブは自分もネットをつなぐ必要があったのでルーターを再起動した。すると、とつぜん回線が切れたので兄は言った。「かんべんしてよぉー!」と。
 その瞬間、兄の言い方に腹を立てて、ボブは兄に声を荒げて怒ってしまったことがあるんだと。
 長い付き合いの中で、温和な性質のボブが怒っているところを僕は見たことがない。だから、その事件が彼にとって特殊だったことは分かる。 

 しかし、ちょっと待てよ、と思う。その話からすると、ボブは僕にではなく、僕の連れ合いと家族に同情していることになる。つーか、人のパソコンと回線でネットゲームをずっとしてる君の兄と僕は一緒かよ!
 
 いや、もういいんだ。そうなんだよ…。自己満足の録り直しって、周りの人にメーワクをかけるという時点で、ゲームにハマるのと変わりないんだよね。こんなに録り直さなくても弾けるように腕を磨こうと、音楽とは別の方面から諭されたような気がしました……。

 さて、ボブがミックスをしてくれた音を聴きながら、「ここのベースがずれているみたい」とか「ここのエレピをもっと上げてほしい」とか注文をして、曲を仕上げる。終わったら二人でまた聴きなおす。
 全部の曲について音のバランスや、間違った音がないかという確認作業が終わったら、今度は曲間の時間調整をする。余韻を残すような曲のあと、すぐに次の曲が始まってしまうとよくない。だから、たとえばラスボス曲とエンディング曲の間は少し曲間を長めに設定したりするのだ。それが終わると、データをCDに焼くのだ。
 ここで音飛びしていたらいけないので、他に何もせずただCDだけを最初から最後まで聴く。(市販のCDを買って聴いても、ごくたまにノイズが乗ってしまっているものだとか、音飛びしているものがある。HelloweenのTime of the Oathとかね。)
 こうしてできたのが、このマスターCDRだーー!
 

 いやあ、本当にありがとうございました。体から憑き物が抜けていくような感覚だ。
 もうここまでやってもらったら満足だ。僕なんかでは絶対できないような、すごく良い音になったし、もうこれで聴いた人に音圧不足だとか音が悪いとかも絶対言われない。
 そこでなぜか僕は不用意な一言を口にしてしまった。「なんか、ゼロムスの終わったあとに、シュワーって変な音が少しだけ聞こえるよね」と。「でもいいよ、普通に聴いてて気にかかるレベルじゃないし。これでOKにしよう」と。
 
 マスターをもらって僕が家に帰る途中、携帯にボブからメールがあった。「言われてみればあのノイズ気になる」と。
 僕はまた彼の作業時間が増えてしまうと思い、「いいっていいって。それをまたやり直すくらいなら次のアルバム作った方がいいよ」と返信をした。
 しかし、ボブからは「やっぱりやり直す。マスターは宅急便で送る」とメールが。

 ほら見ろ!やっぱり気になったら人間やり直したくなるんだ。じゃあ僕がこんなにやり直して家族とボブにメーワクかけてもそれは大きな罪じゃないだろ。ボブだって人の見えないところが気になって、こうして直すんだから。
 いや、音楽というものはむしろ見えないこだわりで作られているんだ。このバンドを中心になってやっている僕からすれば、こだわるのが僕だけでなく複数になれば、それは良いものが出来上がる材料にもなるのだ。はははは!

 いや、ちょっと待てよ。そもそも僕が重箱の隅をつつくようなことを言っていなければ、ボブだって満足して自分の役割を終えられたはずなのだ。以前ライブをして、来てくれた人に「いやー、素晴らしいライブでした。今日はもう最高でしたよ。好きな曲もやってもらえたし、演奏もすごくよかったです。…死神博士のMCがちょっと長かったけど」って言われてガーンと落ち込んだのと似てるじゃないか。
 結局僕が悪いのか!

 いやですよね神経質な人って。

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