2015年1月5日月曜日

サンリオピューロランドに行ってきたよ。

 娘二人の親となって、女子の領域に立ち入ることが増えてきた。最近言われるようになった「大人女子」とか「理系女子」とかいう女子ではない。れっきとした、ホンマモンの「女子」である。その世界はメルヘンであり、お姫様であり、総パステルカラーでフワフワなのである…。

 そんな女子の総本山であるところの、サンリオピューロランドに行ってきた。
 長女は最近マイメロやキティを好きになったようである。また、近所の公園にはコンクリートのちょっと高い台があるのだが、そこをステージと見立てて勝手に妙な歌をうたい踊り、「お父しゃんはお客さんね。いぇーいって言って」と要求してくる。ではサンリオのテーマパークに行ってパレードでも見たら楽しかろうと思ったのである。




 入り口にはマイメロの提灯が立っており、その前で皆が記念写真を撮っている。その奥にサンリオピューロランドの建物がそびえ立っているのである。先ほど総本山と書いたが、さしずめマイメロやキティの巨大な提灯は御神体といったところか。その神々しさはメッカのようである。ここからムスリムのするように、一歩一歩ひざまずきながら祈りを捧げて歩を進めなくてはならない気さえしてくる。気圧されている父親はよそに、長女は一気に興奮度が上がったようで、神像に向けて猛ダッシュ…。まあ、嬉しそうでよかった。




 中に入ると、これはもう女子は絶対大喜びだろうという景色が広がっていた。そもそもサンリオピューロランドはテーマパークであり、遊園地ではないので、乗り物がたくさんあるわけではない。ただこの空間にいて、ゆるい人形劇を観たり、甘いものを食べたりしてゆっくり過ごすことを目的としているのだと思う。
 入り口そばにおみやげが売っていたので、娘はそこに向かいダッシュ。そういうのは帰りに買うものだよ、と言ったのだが、マイメロのぬいぐるみを欲しいと言って譲らない。帰る時に買うのではなく、「今日はこれを持って遊ぶの!」とあまりに真剣な目で言うので、そういうものか…やはり総本山に来たら女子の言うことにあまり逆らわない方がいいという地形効果も働いたのでガチャガチャなども含め数点買ってあげた。
 
 売店の店員さんやテーマパークの従業員さん達は、一人残らず完璧に、どこから見ても「女子」であった。こういうのは年齢とか関係ない。「女子」なんだよ!なんて言ったらいいの、こういう有無を言わせない迫力。これが巷に言う「女子力」ってものか?(たぶん違う)
 三つ編み、ぱっつん前髪、どことなく残るあか抜けなさ、ギンガムチェック、長いスカート、リボン、フリル、そうしたものが全て備わっていて、なおかつこれが当たり前ですという表情でそこに立って、笑顔を振りまいて仕事をしているのである。
 メタルの世界で言ったら、


 こういう感じ。

 ところで、園内には外国人のお客もいるので、英語ができる従業員さんが多い。しかし、できない人もメルヘンな気合いでなんとかしていた。
 ジャガイモにご飯がつまってて割り箸に刺してある食べ物(なんていうか分からないけど、高速道路で売ってそうなやつ)を屋台に買いにきた外国人のおっさん、やたら店員の女の子に絡んでいて、いちいちそれは美味しいかとか聞いていた。「イッツデリーシャス!」など、超笑顔で答える店員さん。
 外国人客「What kind of sauce ?」
 店員さん「………うーん、、、」(そりゃそうだよな、どんなソースか聞かれても困るだろう。)
 しかし店員さん、ちょっと考えたあと超笑顔で屋台の下から大きなペットボトルを取り出した。
 店員さん「This sauce !」
「業務用、焼肉のたれ」
 うーむ、メルヘンだ。 

 さて、アトラクションは少ないとは言え、ディズニーランドで言ったらイッツアスモールワールドみたいな、人形がたくさんいてゆっくり船で回る乗り物みたいなのはあるので、それなりに並ぶ。キティちゃんと写真を撮るにも並ぶ。
 そういう時には娘の退屈を紛らすことを第一に考えなければならないのだけど、つい習性で周りの人に目がいってしまう。

 前にいた大学生風の青年。一人だったので、彼女に順番待ちをさせられているのか、こういう世界が好きで、一人で来ているのか、どちらだろうか…。小説を読んでいたのだが、後ろにいたのでそれが目に入ってきた。以下、その本文。
 
 ちょっと渋くて すっぱい関係
 だってジグザグ 恋はジグザグ

 なんだーこの文章ーー!?
 マジかー。
 もうこの人、絶対1人で来ている人に決定。
 
 その前にもおじさんが1人で並んでいた。なんかキョロキョロしている。前の青年の堂々とした感じに比べると落ち着かなく見える。そこにお母さんと娘が来て「ありがとうー」と言って列に入っていった。要するにお父さんが順番待ちをしていたのである。
 しかし、そのお父さん、いきなり不満をぶちまけた。
「どんだけ時間かかってんだよ!俺がここにいたら変だと思われるだろうが!」
 かわいそうに、お母さんはすごく申し訳なさそうな顔をしていた。お父さん、誰もあなたを変だと思わないよ。待ち時間が長かったのと、あまりにもこのメルヘン総本山がアウェー過ぎたせいで心細かったんだね。しかし、その娘は完全に父を無視。よし、たくましく育ってくれ。
 
 他にも常連客らしいカップルの話が聞こえてきて、それも面白かった。

 彼女:「私も、もしかしたらここで踊ってたかもしれないんだけどなー」
 彼氏:「面接受けたんだもんね」
 彼女:「そう」
 彼氏:「でもさ、ダンサーさん、みんな細いよね」
 彼女:「………(怒)、でも私も受けたときは細かったし…」
 彼氏:「じゃあさ、人形の方で受ければよかったんじゃない?」
 彼女:「………(怒)」

 この二人、大丈夫なのか!?
 
 なんだかそこにいる人間ばかり気になってしまったが、僕自身もその場を楽しんで、十分にメルヘンな気持ちになっていた。その日は娘を女王のように扱い、連れ合いと「どんなワガママを言っても今日は聞いてあげよう」と約束していたが、そうしたらイライラしたりすることもなかった。

 マイメロの人形劇があったので観ていこうとしたら、ポスターの下に「小学生以上対象」と書かれていた。
 僕:「あ、ここ。小学生未満の方には厳しい内容となっております、って書いてあるよ」
 連れ合い:「いや、『厳しい内容』じゃなくて『難しい内容』でしょ」
 単に僕が見間違えただけなのだが、もし「小学生未満には厳しい内容」の人形劇だったら面白いなと思ってしまった。
 うわー、マイメロちゃんの耳がもげたー。そこからおびただしい量の綿が…
 とか、そういう内容だろうか。

 連れ合いが娘をトイレに連れて行った時、一緒に来た次女を僕がその間だけ預かった。うちでは長女の世話は僕、次女(0歳7ヶ月)の世話は連れ合いと決まっている。次女は僕が抱くと大声で泣き出すのだ。赤ちゃんというのは父親に対して人見知りする期間が必ずあり、長女もそういう時期があったのだが、それが次女はすごく長い。僕も嫌がられてもなんだし、長女も僕が次女を構うと怒るしで、かなり次女とは遠ざけられている。
 それが、なぜか少し機嫌が良くて、その時は僕が次女を抱いても泣かなかった。ああ、メルヘンの国にニコニコした赤子を抱いて立っている、この幸せは何に例えればいいだろう。
 近くに「サンリオピューロランド限定」と書かれたプリクラの機械があった。次女が笑っているうちに二人でプリクラを撮ったらどうだろうか。長女は絶対怒るから隠しておくのだ。仕事で使うノートとかにプリクラを貼ろう。ああ、それでも家で仕事をする時に長女にバレたら大変だ…とか思っていたら、がぜんプリクラを撮りたくなってきた。
 しかし、僕はプリクラを撮った経験がほとんどない。人に連れられて撮ったことならあるが、自分でお金をいれて撮ったことは一度もない。写真を撮った後に何か文字を入れたり、ラクガキをしたりするんだよな、と思ったら急にハードルが高く感じられてきた。撮りたい…が、このプリクラの前に付いた「すだれ」が僕には重い!
 そうして機械の前をウロウロしていると、店員さんが寄ってきた。「かわいいねー」などと言って次女のほっぺを触り始めた。女の人にはあまり人見知りしないので、やはりニコニコしている次女。
 なんだよ…俺はこの子とプリクラ撮りたいんだよ。あっち行けよ「女子」!とか思って、もちろんそんなことも言えずグズグズしていたら娘と連れ合いが帰ってきてしまった。やはりプリクラを撮るには女子力が足りなかったようだ。
 

 その日のハイライトは、やはりパレードだった。
 始まる小一時間前から席取りをしている人も多く、まともな席で観られないかと思ってグルグル回っていたら、けっこう良い場所があったのでそこに娘と座った。
 キャラクターが登場する前からパレードは大盛り上がり。それはダンスがすごいから。アクロバットをの人も体操をやっていた人のような体型で、次々に身軽な技を決めている。基本的に女の子が憧れるような、かわいい振り付けのダンス(振り付けは、振付稼業air:manがやっているらしい)なんだけど、そこに曲芸が入ってサーカスのような趣になっている。もっとサンリオのキャラクターに見合うゆったりした感じなのかと思ったら、パレードは一気にテンションが上がる感じだった。前に東京ディズニーランドのパレードも観たけれど、全体にみなぎる気合いの入れようとプロの魂は断然こっちの方が上だなあと思った。(ディズニーランドのが気合いの入っていない回とか場所だったのかもしれないけど)
 やはり人前に出て芸をするというのは、これくらい真剣に自分の技術を高めて、自分と向き合って堂々とやるべきことなんだと思う。
 
 さて、このような雰囲気に弱いのがうちの娘である。わー!と盛り上がる前に、引いてしまうことがあるのだ。辺りが暗くなったときに、横にいた娘は僕の膝に座り替えていた。僕自身はこんな素晴らしいショーを娘と観られて、それだけで気持ちが盛り上がっているんだけど、娘の方はもしかしたらトイレに行くと言ったり、帰ると言いだすかもしれないなと思っていた。
 それが、キャラクターが出た時には「キティちゃんだ!」「おとうしゃん、マイメロちゃんいるよ!」などと盛り上がり始めた。
 ショーのMCのお姉さんが、「今日は特別な人をお迎えします!」と言った。それでキラキラの馬車に乗って登場したのが「キティちゃんのお父さんと、お母さんです!」とか言われた時には、なんじゃそりゃーとずっこけたが、やはり娘は喜んでいた。
 
 そしてパレードの最後、お姉さんが「みんな、一緒に踊りましょう!」と声をかけると、周りの子どもたちがわらわらと集まってロープを越え、ステージに歩み寄っていった。こういう展開がうちの娘は最も苦手なのだ。
 そういえば僕も子どもの頃、ヒーローショーとかで敵の戦闘員が「子どもをさらってこい!」「イー!」とか言って客席に降りてきたとき、どうか自分の方には来ないでくれと必死に念じていたものだったなあと思う。
 しかし、娘は自分から「行く」と言いだした。これには僕の方が狼狽してしまって、「え!?行くの?お父さん一緒に行けないよ?」などと言ってしまった。しかし、娘は前に座っている人をぐんぐん通り越して、ロープも越えてお姉さんのところにたどりつき、可愛いポーズを控えめにとっていた。それを見て連れ合いは感涙…。父はプリクラのすだれさえ越えられないのに…

 メルヘンのパワーはすごい。娘の内弁慶な性質くらいは吹っ飛ばしてくれる雰囲気と勢いがある。
 満足げに帰ってきた娘。いつも家にいる時くらい自己中では困るけれど、いざという時には物怖じしない子になってほしいので、本当に連れてきて良かった。
 

 男親でも、できる限りは子どもと同じものを見て楽しめたらいいと思っている。
 たとえば僕の中学生のころには「セーラームーン」が爆発的に流行ったけれど、観る気がしなかった。さかのぼって小学館の雑誌『小学〜年生』を読んでいた時も、本誌には「はーいまりちゃん」や「スイートらぶらぶ」などの少女漫画が載っていたけれど、飛ばしていた。そういうのを読むことが恥ずかしいとかカッコ悪いと思っていたのではなく、単純に興味がなかったのである。
 けれど、女子の世界はすごいなと、いまこの年になって思っている。
 本来、僕自身はマイメロに別に興味はなく、最初見たときは「なんだこのブルーナのうさぎのニセモノみたいなのは。ミッフィーにほっかむりをかぶせて、なにがマイメロディちゃんだ!」と思っていた。しかし、娘が「かわいいー!」と言って騒いでいるのを見ていたら、良いもののような気がしてきて、しまいには僕もtwitterでマイメロをフォローしたり、サンリオ総選挙で「やばい、シナモンに負ける!」とか言って毎日投票したりという体たらくである。
 また、同じく女子の世界であるプリキュアも、毎週一緒に楽しんで観ているうちに話が楽しみになり、娘は気乗りがしなくてその日の放送を観ようとしなくても、録画を「早く観ようよ!」と言ったりするくらいである。
 
 うーむ、まずい。今まで全く自分の中に無かったものに目覚めるのは怖いような…。
 しかし、今やっているプリキュアなどは悪の手下になった幼馴染を元に戻すために、赤い鏡の中から出てきたラスボスのところに攻め込んでいくという展開になっており、なんか娘がいなくてもこれだったら来週が楽しみのような……まずい。
 よし、こういう時は自分の中の男らしい気持ちを思い出すためにも、メタルだー。amazonでメタルのCDでも買うか!

 あ、Blind Guardianが新譜を出すの?買わないと!ハンズィ・キアシュ(ドイツ人)の野太い声は女子と正反対にあるものだし。
 ……って、
 

 おい、ハンズィ!お前ぜったいプリキュアにハマってるだろ!

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