2015年11月7日土曜日

アルバム1枚通して聴けるCDって…

 次のCDを作ろうというんで、選曲に迷っている。
 まあ基本的には自分の好きな曲をやればいいのだ。だけどやっぱり作るからには手に取った人が気に入ってくれるものにしたい。カーステレオでもiphoneでもなんでもいいから、とにかく通しで聴いてもらえるものにしたいのだ。
 では、自分が通しで聴くようなアルバムって、どんなものだろうと考えてみた。

 音楽の記録媒体が、おおまかに言ってレコード、カセットテープ、CD、mp3と流れてきたとして、僕らはちょうど全てを体感している世代に当たると思う。(ただし、アナログ盤の扱いは難しいので子ども時代の僕などは家にあったレコードプレイヤーをあまり触らせてもらえなかったけれど)
 メディアが小さく軽くなるにつれて、アルバムを買ったとしても好きな曲だけ聴くようになり、「通し」で聴くことは少なくなる。テープは早送りできて、CDは曲をスキップできて、mp3は好きな曲だけ持ち運べるんだから、そりゃそーなる。

 しかし、時間さえ許せばやっぱりアルバムは一枚通しで聴きたいものだ。なぜそんな当たり前のことを今さら書くかというと、最近のCDの多くに不満があるからだ。
 「シングルカットできるようなキャッチーな曲とおまけみたいな気の抜けた曲とがハッキリ分かれているようなアルバム」と、「うちのは全曲シングルカットできるぜ全部聴いてくれよな!」というアルバムがあるけれど、僕はそのどちらも1枚通して聴く気になれない。

 前者は、あまりにも「おまけ曲」がダメ過ぎる。誰も好きなアーティストがあからさまに手抜きしてるのなんて見たくないでしょう。
 そして後者に関しては、1枚聴いたあとに何の感懐も湧かないのだ。すごく一所懸命作っているのに悪い気もするんだけど、1枚聴いたからには「あー……終わった」という、映画のスタッフロールを観ているような感覚がほしい。

 例を挙げると、Within Temptationというバンドがあって昔から好きなんだけど、最新作は正当に進化していてサウンドもめちゃくちゃ良くなり、曲の粒も過去最高に揃っている。でもまったく聴く気がしない。一体なぜだ…
 ジャンプ黄金期の連載でたとえると、ドラゴンボールにスラムダンク、幽遊白書、ろくでなしブルース…とあって、でもボンボン坂高校とかアウターゾーンは必要だよな…っていうの、あるじゃないですか。(余計わかりにくいか)

 どんなアルバムが「1枚通して聴ける」のか、それは「流れ」と「起伏」だと思う。世に言う「名盤」というやつは、その辺りが他のCDと圧倒的に違う。
 最後に長めの曲が入っていればなお良い。
 メタルのアルバムで意欲作みたいなのは、「最後が長い曲」率が異様に高い。そして、いろんな要素をぐっちゃぐちゃに混ぜ込んで冗長になっちゃってる率も非常に高い。ライブでもその長い曲はほとんどやらなかったりして、本当に君たちこの曲を自信もって世に出したのかと言いたくなる。

 こうなると、要するにコンセプトアルバムがいいんでしょうということになる。


 中学生のころにサージェントパーズを死ぬほど聴いて、もう初恋の人を忘れられずにいつまでも面影を追い求めているようなものだ。格ゲーの洗礼を受けた人はいつまでも春麗が好きでしょう。実世界でもつり目の子ってすごくかわいいと思うじゃないですかそうでしょう。

 話を戻そう。確かにコンセプトアルバムは良いものが多いんだけど、全てのCDがコンセプトアルバムになるべしとは思わない。1枚聴くのが重いからだ。筋肉少女帯の「レティクル座妄想」は最高だけど、毎日それだけ聴きたいわけではない。「猫とテブクロ」も聴きたいし、「エリーゼのために」を聴きたいこともある。
 それに一回聴き始めたら全部聴かなきゃいけない気にもなる。1曲だけ聞こうという気にはならない。ふつう、redを聴いたらstarlessまで聴くでしょう。

 というわけで、今回のブログでは、「コンセプトアルバム」というほどコンセプトがあるわけではないんだけど、「流れ」と「起伏」があるために1枚を通して聴いている大好きなアルバムをいくつか紹介したいと思う。

 1 ハードロック編 Taken by force / Scorpions

 1978年発表の5thアルバム。墓場みたいな神聖な場所で撃ち合いを!みたいな理由で発禁になったジャケット。
 1曲目のSteamrock FeverがコンパクトなSEから始まるのが、うまく世界に引き込みつつ肩肘張らない感じで好き。この曲とHe's A Woman - She's A Manみたいな、どキャッチーな曲を最初とラスト前に持ってくるのは配置としてベストだと思う。2曲目がうってかわって深刻で、泣けて燃えるWe'll Burn The Skyでしょ。ウリ・ロート節のI've Got To Be Freeが良い変化球になりつつ、The Riot Of Your Timeで再びうぉぉ!となって、ネオクラの歴史をたどったら避けて通れない永遠の名曲The Sails Of Charon。
 最後のBorn To Touch Your Feelingsは感動的なバラード。やっぱり最後の曲って、この1曲のために今までの全部がありましたというくらいの迫力が欲しい。これ、ドイツで発売されたロックのアルバムなのに、曲の途中でいきなり日本語のナレーションが入るんだよ。
「ぼくは全てを、みんなに与え、君の心の歌になるために、音の精から生まれた。目を閉じてごらん。そしたら僕は、君の心に入り、春のように 君を目覚めさせてみよう。だって僕は、君の心に触れるために生まれたんだから」
 とにかくヨーロッパ産ハードロックの全てが入っていると言える名盤だと思う。


 2 プログレ編 カルメン・マキ&OZ / カルメン・マキ&OZ

 1975年の作品。プログレはコンセプトアルバム率が高いので、どれを選ぶか迷ってしまったけれど、単純に聴いた回数で言えばこのアルバムが群を抜いている。
 ファミコン世代の僕は親がフォーク世代。だから小さいころからフォークソングが基本にあって、音楽も詩もフォークの空気感というものが自分の心にしっくり来るんだと思う。このアルバムは、フォーク、ブルース、ハードロック、プログレを混ぜて日本の叙情性で彩り、それぞれがバランス良く出てきている奇跡のバランス感を持った音像だ思う。
 「午前1時のスケッチ」というシングルカット曲があって、そこにこのバンドの音が集約されているわけだけど、なおかつその先に日本ロック史上最高峰とも言える一曲「私は風」がある。
 「私は風」はyoutubeとかでも聴けるんだけど、これだけ聴いても仕方ない気がする。ボーカリストにとっては挑戦したい曲になるのだろう。寺田恵子も中森明菜もカバーしていて、二人とも超本気でやっていてとても良い。しかし、アルバムの他の曲があってこそ更に輝く曲だと思う。僕は元気のない時に聴きたい曲といったらまずこれを思い浮かべる。生きづらさを感じている老若男女すべてに聴いて欲しい曲だなぁ。


 3 メタル編 Gothic Kabbalah / Therion


  なぜTherion !?と思うかもしれないが、このアルバムすごいんだよ。思えばアルバム『Theli』が1996年に出て、なんじゃこりゃー!となったわけです。メタルバンドなのに、ボーカルが荘厳なコーラス隊ということで、こういう変な音楽待ってたよ!って思うじゃないですか。
 でも、聴いてみたら肝心のアレンジが異様にダサくて、期待していたものというよりも、「うんうん、気持ちはわかるよ。俺、これも好きだよ。ダサいところが」みたいな、キャンプ精神をもって愛されるバンドがTherionでした。
 コンセプトに惚れ込んでいるためにアルバムを買うけれど、買うごとに期待して、「うわー、今回もどの曲も満遍なくダセー!金かやせー!」……「でも好き」みたいな、メタルファンならではの心境です。(わかってもらえますよね)
 それが、このGothic Kabbalahはすごい。なにしろ、Therionのくせに本気でかっこいい。あのダサバンドが奇跡を起こしやがった!
 ただ、CD二枚組なのでどうせリーダーのクリストフェルが気合入れすぎて冗長なアルバム作ったんだろうな、洋盤でてないし日本盤高いし…と思ってしばらく買ってなかったのです。本当に後悔した。このアルバムの前から加入した元イングヴェイバンドのマッツレヴィンと、スノーウィ・ショウという二人のボーカルが良かったんだろうと思う。まず、曲が過去最高に良い。
 まず一曲目、これはダサい。我慢して聴いてくれ。いつものTherionです。
2曲目からはメロディ、テクニック、起伏に富んだアレンジともう一曲たりとも外すことなく最高すぎ。魔法にかかったような素晴らしい音像。
 そしてCD二枚目。惜しいけどダサい。ほぼいつものTherion。
 ということで、2枚組のうち1枚目だけが全ての音楽ファンにおすすめできる内容。Therionというバンドが11枚もCD出してきて、こんなにすごいアルバムを2枚組のうち1枚だけでも出したということがすばらしい。なお、このあとにもまだアルバムは出ているが、魔法はもう解けてしまった。


 というわけで、メタル編だけ文句ばかり書いたのでTherion大好きな人がたくさんいたらこのブログ炎上するかもしれないけど、まあそんなにたくさんいないだろう。
 特にこの三枚のアルバムが人生最高というわけではなく、思いついた順に書きました。
Kate Bushとか筋肉少女帯の1枚通して聴けるアルバム、とかはまた他の機会に考えたい。
 そういえばゲームミュージックのCDで一枚通して聴ける流れのあるアルバムってなんだろうな…。映画も含めてサントラって好きな曲ばかり聴いてしまうような気がするけど、それもまた考えてみようっと。

 パラメキア帝国のCDを作る時は、やっぱりゲームのオープニングで使われている曲から入って、最後にラスボス曲〜エンディング曲みたいにすると流れができるわけだけど、いつもそれでは芸が無い。いつかは他のことにも挑戦してみたい。
 特に最後の曲に何を持ってくるかで印象が全然変わってくるけれど、次のCDにも何を入れるか迷い中。悲惨な感じに終わるアルバムは自分の性質上作れないと思うので、あー楽しかった…とか、よーし明日もがんばるぞ!みたいな感じの残る曲を選びたいな。



 web拍手のお返事

・バトル曲ではないのですがFF7のオープニング~爆破ミッションとかFF9のハンターチャンスとかいかがでしょうか。両方とも独特のリズム感が好みです。

 <こんな閑散としたホームページおよびブログにメッセージをいただきありがとうございます。そしてお返事遅れてすみません。もしかして若い方ですか!?だってプレステなんてすごく新しいハードじゃないですか。
 …というのは冗談として、僕らは新しくてもスーファミくらいまでの曲をやってきましたが、実はペルソナ3や4の曲とか、ニーアの曲とかも好きなのでいつかやってみたいと思っているんです。
 挙げられている曲も二曲ともすごく好きです。確かにリズムが違うと曲調にもバラエティが出てくるし、僕らのようなロック編成を基調としつつメロディがギターというバンドではそういう曲で変化をつけるのが良いと思います。他の曲との兼ね合いも含めて、考えてみようと思います。ありがとうございます。
 やるとなるとオーケストラの音、たとえばFF7オープニングのメロディがホルンでバーンと入ってくるところとか、ただ他のロック楽器に置き換えるだけではヘボくなると思うので、そのあたりが思案のしどころかなと思います。
 余談ですが、FF9は「独りじゃない」も、ものすごく好きな曲です。


・サイト先日みつけました。復活おめでとうございます。サイト見てもよくわからなかったのですがすでに新CDを一枚出されてさらに後日新しく出されるという理解でいいですか?だとしたら両方聴きたいです。コミックマーケットに行かないと無理ですか?

 <ありがとうございます。以前に聴いてくださっていた方でしょうか。なら今回のCDなんて郵送でお送りしたいぐらいのところなんですけど、このご時世に住所をお聞きして、みたいなのもちょっとな…というのはあると思います。
 今後もいろいろなイベントには顔を出していきたいと思うのですが、今のところ「ゲーム探偵団」という関西にあるレトロゲームショップにCDを置かせてもらっていますので、そちらを利用していただくのが早いかなと思います。メール便で送ってもらえるみたいです。
(ただ、送料とか手数料がCDの定価を超えてしまうのが何だか…という感じなので、もしお近くならおもしろいお店のようですし、店舗に行ってみるのがいいかもしれません)
 http://www.game-tanteidan.com/eshopdo/refer/refer.php?sid=ns90262&cid=0&scid=&mcid=&me=&vmode=&view_id=198020754000
  しかし、自分で言うのもなんですがよく僕らのこと覚えてましたねぇ&よくこのホームページをよく見つけられたものですね。いま聴いてくださっている方は昔の活動中とはかなり違うようなのですが、前に聴いてくださっていた方もいつかどこかでまたお会いして、聴いてくれたらなーと思っています。

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