2017年1月2日月曜日

2016年に出会った素晴らしいCDを振り返る

 あけましておめでとうございます。旧年はお世話になりました。ライブも一回できたり、少しずつですが次のCDに向けて編曲も練ることができたりで楽しい一年になりました。
 パラメキア帝国の次の活動としては、やっぱりCD作りということになると思います。基本的にゴロゴロ寝っ転がったり暇に過ごしたりするのは嫌いで、何かやりたいとい思っていつも動いているのですが、編曲についてはかなり遅いです…。

 ではこうやって文章を書いているのは時間の使い方としてどうなんだという話はあるのですが、まあブログに関しては新しく買ったCDを聴きながらとかでもできるのと、その時の考えを整理しておくのもいいかなと思っているので、やろうと思います。
 ライブの時にうちのバンドの結成時から付き合いのあるleSYNさんに、けっこうサイトの更新はチェックしてますよと言ってもらったのもあるし、あとはすごく久しぶりにweb拍手の管理ページを見たらけっこう拍手が入っていて、「これはちゃんと働けということか!」と思ったのです。
 いや12月も実際、新しく取り掛かった曲のアレンジをイントロから間奏前まで作ったんですよ。でも、ブログも更新しないしツイッターも時々しかつぶやかないとサボってるのと違いが分からないですよね。そういうわけで、書きます。キーボード打ってる暇あるなら1小節でも進めんかいという人すみません。

 で、今回のブログの内容は、2016年に買ったCDの中から印象深いものをいくつかピックアップして、しつこくなくサラーリと紹介したいということです。
 俺、こんなの聴いちゃってるんだぜ、すごいでしょ。ちょっと紹介しとくけど君にはまだ難しいかもね…とかじゃないです。僕は基本的にノリが良くてわかりやすい曲が好きなので。
 だから、ああこれ俺も聴いてたーとか、そういえばこのアルバムも2016年だっけ、とか思ってもらえればいいと思います。もしまだ聴いていないのがあったりしたら、ゲーム音楽とかロック好きにはぜひ手に取ってみてね。中には今年出たものではないアルバムもありますが、知るのが遅くて今年になってから僕が聴いた、ということです。どれも最後におすすめ曲を載せておくので、興味のある人はyoutubeとかで聴いて、よさげだったらアルバムを手に取ってみてね。(あと、順番は特に関係ないです。)

 では1枚目。

 インスト部門 Headbangers Symphony / Wolf Hoffmann

 怖いおっさんの顔ジャケット。ブラックメタルとかとは別で、なんか怒り出したら怖そうな顔じゃないですか?(映画『セッション』の鬼教師に似てるから、というのもある。)
 ドイツの超老舗メタルバンドAcceptのギタリストの、クラシック名曲アレンジプロジェクトの新作。実はこの人、同じコンセプトでアルバムを1997年に出している。それが周りでは(メタルファンでさえも)誰も騒いでいなかったんだけど、僕は超名盤だと信じていた。その新譜が20年ぶりに出たのである。
 ふつうメタル系のギタリストがインストソロアルバムを出して、しかもクラシック音楽のアレンジなんて言ったら超絶技巧の見せ所と相場は決まっているのに、この人は全くそれにこだわっていない。youtubeとかでたとえば「幻想即興曲ギターで弾いたぞ!」みたいなのがあったとしするでしょ。(まあ、あるか分からないが)それはそれで魂込めて一所懸命に弾いているし良いと思うんだけど、この人がやりたいのは、そういうのじゃない。
 Wolf Hoffmannの場合は、「クラシックってメロディかっこいいよね!でも、長くて小難しいの嫌じゃん?」みたいなノリが全編にわたっているのである。この人はバリバリ速弾きするよりも、メロディの歌わせ方にステータスを全部割り振っている感じだ。
 特にこの新譜では音もアレンジもパワーアップして、本物のオーケストラと共演していたりもする。それと、一作目で「エリーゼのためにブルースバージョン」というアホみたいな(褒め言葉)曲があったんだけど、今回はそれを「白鳥の湖」でやっている。絶対わざとだろこの選曲。これもアホすぎてたまらなく良い。ブラックモアズナイトでリッチーが若い嫁さんにデレデレしてやった(褒め言葉)ダンスバージョン白鳥の湖の次元を超えていると思う。
 実はパラメキア帝国も別に技術にこだわりたい気持ちは始めた時から無くて、ゲーム音楽の素晴らしいメロディを歌わせることに主眼を置いているので、このCDもまた長いことアレンジや弾き方のお手本になるなぁと思っている。

 おすすめ曲:Night On Bald Mountain (よりによってあなたが『はげ山の一夜』って、この選曲どうなんだろう)


 2枚目。
 女性ボーカル部門 This Is Acting / Sia

 USチャートで1位とか、グラミー賞を取るCDが「さあ牛だ」に挙がっていてもいいじゃないですか。
 ビヨンセとかリアーナとかブリトニーに曲を提供している人ですね。ある時からなぜか顔を隠してパフォーマンスしているシンガーソングライター。本人は髪で顔がすっぽり覆われていて、マイクの前から一歩も動かない代わりにマディ・ジーグラーという小さな女の子が凄まじいダンスをする。前作の『1000 Forms Of Fear』ですっかり僕も「カッコイイ!」と好きになったんだけど、今回のアルバムでは日本の空手少女がPVに起用されたりしていて、それもまた素晴らしい。
 彼女の音楽はファンクとヒップホップ、ソウルが下敷きになっているんだろうけど、僕は歌のメロディと彼女の絞り出すような声が好きなのだ。時にかすれたり裏返ったりする声がたまらなく魅力的で、全く顔が見えないのに歌には強く表情が感じられて、心に響いてくる。音楽を聴く時には、だいたい何か自分に活かせるものを探すものだと思うけど、この人の音楽を聴いている時はただ耳に届く歌に埋もれている感じ。
 夜にばかり聴いていたせいか、自分が中学生のころ夜にラジオを聞き始めて、ただそこから流れてくる音楽をジャンルも楽器も知らずに「ああ、いいな」と思って浸っていたのに近いように思う。

 おすすめ曲:Alive


 3枚目。
 

メロディックデスメタル部門 Under the Red Cloud / Amorphis

 これは正確には2015年のアルバムなんだけど、出てたの知らなかったのです。
 Amorphisはもちろん初期のメロデス路線から大好きで、1000 lakesを輸入盤で大喜びで買って、これはすげーバンドだ!そのうちメロデスが世界の音楽を席巻するに違いない!みたいな青春時代を過ごしました。このバンドの往年の名曲にMy kanteleってのがあって、最近ツイッターでカンテレ(フィンランドの古い民族楽器)の名前をちょくちょく見るようになった。これは市民権を得てきたのかと思ったら、アニメで出てきたらしい。とにかくそのアニメのファンもアモルフィスのMy kanteleを聴いた方がいい。「その楽器は悲しみから作られ、終わりの無い苦難からの指板と苦労の種から集められた弦は…」とかそういう歌詞だからきっとアニメが好きな人は共感するだろう。
 そんなメロデスバンドが急にデスボイスを捨ててファンに総スカンを食って、その後またデスに戻ってきて…という流れを20年近く追ってきた。僕自身はバンドの路線変更ってすごく嬉しくてどのバンドでも新しいことに挑戦するのには付き合って楽しんで聴く派である。
 だから、ホントは前のデスボイス全然なしのアモルフィスも好きなんだけど、デスメタル帰還以降はコンスタントに良いアルバムを出している。特に最近は「歌って踊れて民族音楽も取り入れる怪しげなデスメタル」という独自路線を極めつつあると思う。駄盤は無いバンドだけど、その中でも今回は2006年のEclipseに次ぐ出来じゃないかな。ギターのリフもすごく練ってあるし、コーラスは一緒に歌えそうだし、キャリアの長いバンドに途中参入するのに抵抗がある人もここから入って入門盤にしていいと思う。
 ただ、ボーカルのトミ・ヨーツセンはクリーンもデスも上手なイケメンだったのに、最近どんどん筋肉が増えてゴツくなり、ヒゲもじゃもじゃのムサいおっさんになったのが残念。
 おすすめ曲:Death of a king


4&5枚目。

 スウェディッシュメロディックデスメタル部門 Battles / in flames と Atoma / Dark Tranquillity
 
 もうほとんど部門によるジャンル分けが機能していない状態。しかも1枚に絞れず2枚。まあ、アモルフィスはフィンランドだから。
 今回のインフレイムスはアメリカン路線の集大成ともいうべき出来。超キャッチー。僕は個人的に湘南乃風のようにポップだと思う。誇張だけど。でも、コーラスで始まってサビも同じで、さあみんな一緒に歌おうぜ!みたいな『The Truth』とか聴いていると、頭上でタオル回すオーディエンスが目に見えるようである。(僕だけか)
 今回のインフレイムスはそういう意味で、シリアスな慟哭を聴きたいメロデスファンには完全に不向きだけど、ヘヴィかつメロディックでフックに富んでいて、やりたいことを極めている潔さがある。Linkin Parkからヒップホップ成分を取り除いて、ヨーロッパ的な翳りをふりかけたキャッチーなメタルを聴きたい!という人はぜひ聴いたらいい。
 
 さて、対するダークトランキュリティはというと、もう笑っちゃうくらいに正統派メロデスで、スウェーデン度100。
 バンド結成期からのギタリストが一人抜けてしまったので心配していたんだけど、これは杞憂だったようだ。もしかして名盤『Damage Done』以来の出来ではないだろうか。来てほしいところに突進するような2ビートが来て、おっ!ここで来るかというところで変拍子。ギターリフはソリッドでカッコイイし、キーボードが必要最低限の音で曲の泣きのメロディを奏でて雰囲気を持っていく。ボーカルのミカエル・スタンネは相変わらずの美デスボイス。そしてイケメン。若いころは絶対髪の毛なくなりそうと思ってたら、なくならない。
 僕が高校〜大学生のころは、まさにメロデスが花盛りだった。こういう風にメロデスバンドの新作が同じくらいの時期に出て、「どっちがいい」とか言って友達と語り合ったものだ。では、今回の二枚、どっちが良いかということになると、曲の完成度・洗練度で言ったら間違いなくIn Flamesだろう。だけど、一曲一曲に絵が浮かんでくるところと、CDを一枚聴いた後の放り出されたような遣る瀬なさで言ったらDark Tranquillity。よって、どちらもバンドのキャリアの中で代表作になりそうな素晴らしい作品だが、僕はDark Tranquillityが好きだ。 

 おすすめ曲:in flamesはThe End、Dark TranquillityはForce Of Hand

 
7枚目。

 バイキングメタル部門 Two Decades Of Greatest Sword Hits / Ensiferum
 
 あ、もうメタルはいいですか?じゃあ簡単に。
 超速疾走勇猛果敢民謡メロディ。一曲の中にこのバンドのいいところが全部入ったような曲が、1曲目から14曲目まで続く。くどい。非常にくどい。それがあなたのいいところ。
 おすすめ曲:Lai Lai Hei


8枚目。

 ゲームミュージック部門 サガ スカーレット グレイス オリジナル・サウンドトラック / 伊藤賢治

 これっきゃないでしょう。なお、ゲームは僕はプレイしていません。本当はやったらもっと素晴らしいんだろうけど…。ゲームをやる時間はないので仕方がないが、いつかはやりたいと思っている。そして、出たばっかりのCDなのでまだそれほど聴き込めていないのだが、もうとにかくゲームミュージック部門の1番はこれ!本当に素晴らしい。
 今回はオーケストラも生で、エレキギターやバイオリンも生楽器で録音されている。ロマサガのような豪華絢爛な世界が綺麗な音で紡がれていくのだ。
 そして、どの曲もいいメロディ目白押し。二枚組のサントラだけど、飛ばすような曲は一曲もない。イトケンはバトル曲!と思っている人もいるかもしれないが、このCDなら全曲楽しめるに違いない。僕らが子どもの頃から愛してきた「ゲームミュージック」という音楽ジャンルの正当な進化がここにある。まだ聴いていない人でこのサイトに来ている人は全員買え。

 それでもイトケンはバトル曲だと言い張るあなた、このCDはバトル曲めちゃくちゃ多いよ。しかも、どれもついでに作ったような感じがしない。ミンストレルソングも良かったけど、遥かに超えていると思う。少し紹介しよう。

 「花びらを踏みしめて」はイトケンの乙女センスが爆発したバトル。アセルスのラストバトルがノーマルになったような超胸キュン曲。
 「翔遼乱承!」はサガフロ的なイメージもあるけど、正統派ヒーロー的な感じのバトル。そして術戦車的なメロディの音。燃える!
 「冥魔・堕されしものども」はTHE中ボス!って感じ。イントロはサルーインぽい。このギター僕に弾かせてほしい。
 「精霊・そこに在る力」はオーケストラの荘厳かつノリノリなバトル曲。イントロ超燃える。映画的なゲーム音楽か、ゲーム的なゲーム音楽かという二択ではなくて、映画にも使えるゲーム的ゲーム音楽って感じ。すげー。
 「星神・守護者たち」これはもう、オールドファンのための曲でしょう。やばい。イトケン大人げない!どこをどう切ってもサガサガしいサガのバトル曲。この曲だけなぜか6分近く収録されているが、聴き終わった瞬間にもう一回聴きたくなる。あのメロディで、あのリズム。だけど新曲。
 「破壊の響き ~ 大冥魔」は今回新機軸かも。デジタル風味の激しい曲。主人公たちのピンチ感がありつつもノリノリ。メロディが泣く。ギターがメタル的。この絶体絶命の中で立ち上がって歯をくいしばる感じがイトケンだよなー。
 「武術を守護する者 ~ 星神マリガン」は、すごいボス曲。オーケストラの迫力満点で、ゾーマがあと二段くらい変身した感じ。オーケストラコンサートでこれを聴いたら、そのまま動かず席に座っていられる人いないでしょう。
 …もうさすがに長いからやめるけど、ここまででディスク1ね。ディスク2にもすごいバトル曲満載ですよ。そしておしゃれイトケンもあり。しかもラスボスすごい。まあ控えめに言って、イトケンの最高傑作だろうね。
 
 おすすめ曲:これだけバトル曲すごいアルバムだけど、おすすめはオープニングテーマっぽい「緋色の邪星」とエンディングのボーカル曲「胸に刻んで」。


 9枚目。
 ライブ盤部門 Before the dawn / Kate Bush

 1979年のライブ盤を、僕は自室で毎日のように観てその度にポロポロ涙を流していた時期があったものだった。この人が全身全霊を込めて歌っていたり、くるくるくるくると回って踊っているのを見るとなぜか胸にグッとくるのだ。そしてラストの曲が終わって、観客に向かって手を降って、操り人形の糸が切れて解き放たれたようにぴょんぴょん跳んでいるのを見るとダーっと涙腺が決壊していたのだ。なんだろう、あの頃は別に辛いことばっかりだったわけではないんだけど、ヤバかったのだろうか。
 だからこうやって他のCDと同じように並んでいても、音楽として聴くというよりも何らかの儀式に近いような気がする。この人はその頃以来ライブ自体を全くやっていなくて、実に35年ぶりに人前で公演を行ったのだ。コンサートのチケットは15分で22公演ソールドアウトになったらしいが、娘が生まれていなかったら何とかしてイギリスまで行っていたと思う。
 そのCDが発売され、家に届いてヘッドホンをつけ、一曲目のLilyを聴いたら、あの頃の自分が…とかじゃなくて、もう鳴っている音と歌声に圧倒されて何も考えられなくなった。そして2曲目のHounds of Loveを聴いたらもうAメロで涙があふれてくる。だからここで感想なんか書いていてもしょうがないし、これを聴いて感じることをこのサイトに来てくれる人に伝えてもどうしようもないと思う。みんなも、どうしようもなく好きでどんなに愛情を注いでも足りないものってあるじゃん。それと同じです。

 おすすめ曲:And dream of sheep


10枚目。
 その他ロック部門 アトム未来派No.9 / Buck-Tick

 紹介10枚目にして突然のBuck-Tick。でも年末はホントにこればかり聴いていた。
 僕はBuck-Tickを今までまったく聴いたことがなくて、バンドブームの頃も筋肉少女帯とか人間椅子しか聴いていなかった。Buck-Tickはどこかのお兄さんが自分とは違う世界を歌った音楽をやっているバンドで、ジュンスカイウォーカーズとかブルーハーツとか、とにかくそっちのハレの世界の人が聴くものだと思っていた。

 修学旅行先の京都で、清水焼の湯飲みに絵をつけるやつあるじゃないですか。僕はクラスの友達の顔を描いたんですよ。なぜかすごくムキになって、絶対似せてやる!とか思って。そしたらクラスの女子が湯のみにでかく「紅」とか書いてるの。
 で、「なにそれ?あか?」と聞いたら、「あんた何言ってるの『くれない』だよ!」ってその女子に言われた。…で、ああ、ラジオで聴いたあのエックスの曲か、と。あの暴走族みたいなバンドの曲か、とつながったのだ。
 そして、その女の子の友達が、やっぱり湯のみに「悪の華」って書いていた。それには国語の先生がつっこんでて、ボードレールだろうとか言っていた。Buck-Tickって僕にとってはそういうイメージしかなかった。今のいままで。
 それが、なぜか「アトム未来派」というアルバムタイトルに惹かれて(僕は手塚治虫ファンなので)、29年もキャリアのあるバンドの最新アルバムを何の前知識も無しに聴いてみたのだった。

 僕はパラメキア帝国を再開したときに、もう楽器を弾いて人に聴いてもらうというのは本当に特別なことで、CDプレイヤーに入れてもらうのを想像するだけで胸がときめくような気持ちになった。病気になった人が、治った後に普通の生活を送るだけですごくキラキラした気持ちになるというのはよく聞く話だけれど、誤解を恐れずに言うと同じ気持ちだと思う。
 だから30年近くも解散しないで全く同じメンバーで表現を磨いていたり、理想を追い求めている人たちには、それだけで今までとは違った感覚で、素直にすごいことだと思える。それが今までまったく聴いたこともなく興味を持つこともなかったバンドであっても、毛嫌いしていたビジュアル系(?)に属するものであっても。
 
 メタルやプログレ好きには2種類いて、ひとつはメタルに入ったのはX-JAPANからなんですよとか、LUNA SEAを聴いているうちにメタルにも興味を持って…という人。もうひとつは、ビジュアル系を毛嫌いしている人。僕は完全に後者で、何がカッコイイのか全然わからないし、カッコつけて歌っているのが気持ち悪いとさえ思っていた。ビジュアル系と言ったらKISSしか聴いていない、とネタで答えるくらいだったのだ。
 それが何で今更…とは自分でも思う。

 考えてみたら、メタルバンドの出す音は最近ジャンルとして長い行き詰まりに達していると思うのだ。オーケストラと共演しているとか、7とか8弦ギターを使って今までになかった響きのコードやリフがあったり、またはミックスやマスタリングの力で音だけでなくフレーズ自体が加工されて新しい音が生まれていたりと、要するに経済的な面で素人とは大きな壁があって、それが無いと新しい音が登場しないような気がする。腕を磨いたり、独創的な音を出すという勝負ではなくなってきている。
 そんな中で聴いたBuck-Tickというバンドは、サイバーでインダストリアルかつゴシックで、厳然たるオリジナリティをもってそこにあった。RammsteinやPain、Ram-Zetを聴く時に求めるものと、EntwineやTo die forを聴くときに求めるものが融合されてそこにあるような。つまり、もともとすごく好きなイメージで、むしろ今まで何で聴かなかったんだろう、と。
 とにかく僕がビジュアル系バンドというくくりで勝手に持っていた、皮相で空虚なイメージでは全くなかった。

 このアルバムはタイトルに「アトム」とあるけれど、同じ近未来でも手塚治虫にたとえるなら、火の鳥のディストピア感が近いと思う。僕は何しろめちゃくちゃこのアルバムを聴き込み、年末には日本武道館へライブに行ってしまった。他のアルバムを一枚も聴いたことがないのに。
 しかしライブもプロジェクションマッピングと凄まじい完成度の音響による超一流のエンターテインメントだった。ここに書くと長いから他のときにまた書くけれど。とにかくいたく感動するとともに、こんな出会いがあって本当に2016年は良い年だったと思う。

 おすすめ曲:PINOA ICCHIO -躍るアトム-


 2016年の音楽鑑賞を総括しようと思って書いたら2万字を超えてしまった。今度はもっとライトなことを短く書こうと思います。今日は昼飯がうまかったとか。

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